黒透明: 80% 50% 30%
白透明: 80% 50% 30%
□(透過)

閉じる

文字サイズを選択してください。

 

 

閉じる

Entries

くじらになった王様

2017/06/06 11:18


ザトウクジラ

それは、山と海に囲まれた
岬の上に立派なお城をかまえる
たいそう豊かな国の物語です。

お城には、王様とおきさきと三人の子ども達が住んでいました。
隣の国までは、馬を走らせても
険しい峠を越えて三日ほどもかかるので、
争いもなく
人々は、山の幸や海の幸の恵みを受けて
何不自由なく豊かに暮らしておりました。

ある晴れた春の日
おきさきと子どもたちは
狩りに出かけた王様の疲れをいやそうと
潮干狩り(しおひがり)に出かけました。

それは見事に大きな貝が
食べきれないほど採れました。

みんなが夢中になって貝を集めていると
突然
海水がどんどん減っていき
はるか遠くまで潮だまりになってしまったかと思うと
あっという間に
全部集めた波よりも
もっともっと大きな塊(かたまり)が、黒い山のようになって戻ってきました。

そうやって潮干狩りのみんなを
海は飲み込んで去って行ってしまいました。

つなみでした。
王様が生まれるよりもはるか昔の
おとぎ話で聞いたつなみの話は、
こんなにも恐ろしいものだったのかと
人々は途方に暮れました。

王様は嘆き悲しみました。
たくさんの民とともに
大切な大切な家族が
待っても待っても
戻ってこなかったからです。

来る日も来る日も、
まるでうそのように静かな海に
みんなを探しに出かけました。

気付くと悲しみにくれた王様は、だいぶん年を取っていました。
涙がこぼれない日はありませんでした。
なぜあの日、みんなで浜に出かけなかったのか
なぜ、こんなところに国を作ってしまったのかとさえ
思うようになりました。

もう立派なお城さえ王様には
なんの意味のないのです。
心の傷はいえるのでしょうか?
苦しみ続けた王様は、
海でさまよいながら、
疲れ果てて眠ってしまうこともありました。

うとうとしていると
みんなの笑い声が聞こえるような気がします。
目覚めると
それが夢だったことが分かりました。

それでも王様は
少しでもみんなに会いたくて
海の上にいる時間が多くなりました。
泳いで、疲れて、眠って
家族の笑い声を聞いて

もう帰らなくてもいいのかとさえ
思い始めました。
波間に揺られながら眠るのが
幸せな時間でした。
みんなの笑い声にこたえるように
歌ってみたりします。

王様は、気付くとくじらになっていました。
広い広い海原(うなばら)から
戻ってくることはなくなりました。

今もどこかでくじらの歌が聴こえたら
夢の中で
王様が家族の笑い声をきいているのかもしれません。

[編集]

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://morinoshinryojo.jp/tb.php/351-329519b2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)